百%正しい選択より
正しい軌道修正

 グローバルな世界へ出て行くように、新しいことに踏み出すのは怖い。私も決断を下すこと、ゴーサインを出すことの重圧を感じてきました。最終的に残ったA案、B案、C案のどれを選ぶか。将来的にこれでうまくいくのか。誰でも一人ひとりの仕事のプロセスで「この選択が絶対正しいのか」という苦しさに遭遇しますよね。

 でも、迷うのはその選択肢がわずかな差だから。どうにも使えない案はすでに淘汰(とうた)されているはずだから、どれを選んでも大差はない。ただ、選んだ案を後で必ず、間違いなかったと言える方向へ引っ張っていけばいいのではないでしょうか。極端なことを言えば、「就職先を選び間違えたか」と思っても、「いつかこの会社に欠かせない人間になる」という方向で軌道修正を続ければ、それは正しい選択にすることができる。結婚だって一度に一人の人としかできないけれど、共白髪までと願って努力をしていくのと似ています。

 狭い視点で自分だけを見ない。他との違いばかりにとらわれないで、自分の仕事の力を信じて前へ進めば、結果はついてくると私は思います。世の中で誰が成功していようと、友人がうらやましいほど活躍していようと比べることはない。自分の将来は自分で引き寄せるものなのです。

南場智子、ディー・エヌ・エー(DeNA)ファウンダー、取締役。朝日新聞 仕事力 南場智子が語る仕事―4 人間の共通項こそターゲット